夜の嵐 星新一
夜の嵐は、主人公の美矢子が自宅に帰るシーンではじまり、においの感覚に優れるという美矢子は自宅に溢れる嫌な予感に気づきます。その予感は的中したかのように嫌な出来事が、美矢子に立て続けに降りかかります。しかしそのどれもが自宅をでてしまえば、まるで何もなかったかのように元通りです。美矢子は、この幻覚のような症状の原因が自宅にあると考え、室内を歩き回ります。すると見覚えのない箱が見つかります。
箱といってもありふれた外見でなく (中略) 宝石箱とでもいったものだ。
それでいて、滲み出るような邪悪さを発揮していた。
美矢子がその箱に手を伸ばすと後ろから声が聞こえ、未来から来たという青年が現れます。この青年によって、美矢子は箱の効果とその使用目的を知ることになります。
「で、どんな働きをする装置なの、それ」
「そばの人間の心に反応し、いやだなと思うことを拡大し、幻覚として感じさせるのです」
この箱は現代人にとっては苦痛というレベルのものですが、未来人は退屈を紛らわすエンタメのものとして使うようです。ストレスは度が過ぎれば苦痛でも程よいものならエンタメとして楽しめるのかもしれません。それにしても未来人のエンタメは度が過ぎているように思います。でももしかすると私たちが普段危険と感じることは、技術的に克服されていて未来人にとってはなんてことないのかもしれません。普段ストレスに頭を悩ませている人には、未来人は嫉妬してしまうくらいです。ストレスはネガティブなものとしか考えませんが、星新一にしてみたら生きている実感が得られるステキなものなのかもしれません。