namamugichanのブログ

どうも生麦です。気になった小説についてとりあげます。おすすめあったら教えてください。

中村文則 「世界の果て」

著者の中村文則さんは、デビュー作が「銃」で「R帝国」「教団X」などの作品を書いた作家さんです。一時期書店に「教団X」が山積みになってるのをみた人も多いのではないでしょうか。本書のあとがきやインタビューなどでも自身の暗さについて言及していて、作風にもそういった面が表れています。

明るさは時に人を疎外するし、明るさは世の中に溢れていると語っていて自身の暗さを武器にして小説を書いているようです。「世界の果て」もそういったものです。

 

追い詰められていく人びと

生活の中で徐々に追い詰められ世界の果てに行き着くというのがテーマです。五つの独立した章からなりそれぞれの登場人物を通してこのテーマが描かれます。順に上げていくと、

  1. 家に帰ると部屋には自分では抱えきれない歪んだ自分の個性が死んでいるのを見つけ、捨てる場を探してさまよう
  2. 絵を描く男が創作する中で生活に行き詰まり、部屋での苦しみに耐えかねて外に出る
  3. 学校、社会の中でうまくいかず鬱屈した思いを抱く少年
  4. 行き詰まると失踪し、生活を変える男
  5. 苦しいながらも、個を保つべく抵抗する男

 

自分の個性が歪んでいることで社会にうまく適合できないでいることってあると思います。そんな時にとる行動もまた三者三様でこの小説内で言えば、自我を殺す、創作に没頭する、社会に刃を向ける、周りを変える、苦しいながらも抱え込む。ただそれぞれが孤立し、お互いの状況がわからないだけでこの小説では顔を合わせるような近くに苦しむもの同士がいたりします。意外にも似たもの同士のスモールワールドでお互い差し伸べる手で助け合いが必要なのかもしれません。

 

 

世界の果て (文春文庫)

世界の果て (文春文庫)