namamugichanのブログ

どうも生麦です。気になった小説についてとりあげます。おすすめあったら教えてください。

花房観音 「桜の里」

「見せてやれよ、東京中の男に。たくさんの男を落としてきた穴を」 主人公の鈴香は、男に愛を売る娼婦です。小説は短い四十ページほどですが、鈴香の人生の幼いころから四十代までの長いスパンが語られます。愛という虚構を巧みにうみだし、引き換えに金銭を…

カズオイシグロ「降っても晴れても」

短編集「夜想曲集」に収められているこの作品は、コメディのようなテイストで笑いがありつつも人生を振り返る深みのある作品になっています。大学時代を音楽を通して親しくなった主人公レイとのちに夫婦となるチャーリーとエミリの三人。主人公レイはもうす…

中村文則 「世界の果て」

著者の中村文則さんは、デビュー作が「銃」で「R帝国」「教団X」などの作品を書いた作家さんです。一時期書店に「教団X」が山積みになってるのをみた人も多いのではないでしょうか。本書のあとがきやインタビューなどでも自身の暗さについて言及していて、作…

又吉 「劇場」

流れ続ける時代の中で誰にも取り上げられずに忘れ去られて行く記憶の一つ一つを、彼等は安易なロマンチシズムに溺れることなく、残虐性に酔うこともなく、現代の適正な温度で掬ってみせた。もっとも、その温度が僕にとってはひどく冷たいものとして感じられ…

夜の嵐 星新一

夜の嵐は、主人公の美矢子が自宅に帰るシーンではじまり、においの感覚に優れるという美矢子は自宅に溢れる嫌な予感に気づきます。その予感は的中したかのように嫌な出来事が、美矢子に立て続けに降りかかります。しかしそのどれもが自宅をでてしまえば、ま…

ねむりウサギ 星新一

「ねむりウサギ」は、古典的な昔話「ウサギとカメ」を星新一流のアレンジで書き上げた作品です。原作から引き出される教訓とは、異なる教訓が得られるものに仕上がっていて作者のオリジナリティを感じます。話の筋はカメとの競争で負けたウサギはプライドが…