カズオイシグロ「降っても晴れても」
短編集「夜想曲集」に収められているこの作品は、コメディのようなテイストで笑いがありつつも人生を振り返る深みのある作品になっています。大学時代を音楽を通して親しくなった主人公レイとのちに夫婦となるチャーリーとエミリの三人。主人公レイはもうすぐ50歳にもなる頃となり、チャーリーに呼ばれチャーリー、エミリ夫婦の家を訪れます。そこでレイは、チャーリーから夫婦仲がうまくいっていないことを聞かされます。夫婦仲を昔のように良くするためにレイが必要だとチャーリーは話します。そしてレイはチャーリーが出張でいない2、3日の間エミリと過ごすことで夫婦を良くするため頑張ります。
人生における上昇志向は必要ですが、人間関係の毒にもなります。レイの現状はお世辞にも良いとは言えないません。エミリにレイの今を知ってもらい、エミリに自分とチャーリーとの暮らしぶりは悪くないと気づいてもらうことがチャーリーの思惑です。物語が進む中、レイがエミリの秘密の日記帳を誤ってぐしゃぐしゃにしてしまいます。それを隠すために行動することから、物語は思惑のすれ違いで笑いが生まれます。
夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/02/04
- メディア: 文庫
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